Walkable town 歩ける町

シアトルは全米で8番目に「walkable」 な都市なのだそうだ。

Walkable(ウォーカブル)とは、そのまんま、「歩ける」「歩きやすい」ということ。

たぶん、「ある町がwalkableであるかどうか」つまり「歩きやすい町であるかどうか」がどうしてそんなに良いことなのかは、アメリカの郊外や地方都市に行ったことがないと、ピンとこないのではないかと思う。

アメリカの郊外住宅地や地方都市って、「歩くこと」をまったく念頭に入れずに造られているのだ。

通勤も、買い物も、子どもの学校への送り迎えも、家の真ん前に停めた車を使って行くのが当然。だから歩ける距離には何がある、という発想自体がない。学校もスーパーも、クルマで何分という距離感でのみ把握されている。

最初にアメリカの町がいかに歩けない町なのかをつくづく思い知らされたのは、もう20年以上前、元旦那の実家であるルイジアナのシュリーヴポートという小都市に行ったときだった。

そのころうちの息子はまだ1歳半だった。普通の日本人の感覚で、ベビーカーを押してその辺を散歩しようと思ったら、家のすぐ目の前の大きな道路には、歩道というものが存在していなかった。

片側3車線くらいある幹線道路ではあるけれど、別にクルマ専用の高速道路ではなくて、ふつうの州道だった。

歩いて15分くらいの距離に公園があるのに、そこまで歩いていくという発想は誰も持ってないのだ。

道路はやたら無駄に広くて、横断歩道とか歩道橋なんてものもついてないから、どこまで行っても渡れない。だいいち、昼間でも道を歩いている人がいない。いるとすれば昼間から酒の匂いをさせてフラフラしてるような相当ヤバい感じの人だけ。

この国では散歩というのはクルマで行ってするものなのか、と衝撃を受けたのだった。

日本の地方都市もクルマがないと生活できないよ、というけれど、いくらなんでも最初から歩道がまったくないってことはないのでは?

Walkableな都市のランキングを作っているのは、「WALKSCORE」というサイト。

都市名を入れるとその場所がどのくらいwalkableかというスコアが出てくる。公共交通機関がどのくらい使いやすいかを示す「交通スコア」と、自転車道や自転車ラックなどが整備されているなど、自転車に乗りやすい環境が整っているかどうかの「自転車スコア」もある。

全米8位のシアトルのスコアは73点。シュリーヴポートは32点だった。

もっともwalkableな都市はニューヨークで、89点。その次がサンフランシスコ、ボストン、マイアミ、フィラデルフィア、シカゴ、ワシントンDC、シアトル、オークランド、ロングビーチとなっている。

このサイトでは、「歩ける町」になるための必須要件として、以下のポイントを挙げている。
•    メインストリートや公共スペースなど、人が集まる「中心」があること。
•    商店や公共交通機関が発達できるだけの人口があること。
•    多様な所得の層が住めるリーズナブルな家賃の住宅があり、ビジネスと住宅がほど良く入り混じっていること。
•    公園や公共施設が充分な数だけあること。
•    クルマよりも歩行者を優先したデザインであること。たとえば、ビルの前に駐車場がでーんとあるのでなく、入り口が道に面していて、駐車場は奥のほうにあるなど。
•    学校やオフィスが町の中にあり、住民の多くが歩いて学校や仕事に行けること。
•    道路が自転車、歩行者、公共交通のためにデザインされていること。

つまり単に歩ける、というだけでなくて「歩きたくなる」町でもあるわけだ。

都市プランナーのジェフ・スペック氏も、「The walkable city」というTEDトークで、アメリカ郊外の住宅街設計を「史上最悪のアイデア」とけなしつつ、クルマ用の道路に投資する代わりに70年代から自転車用のインフラと公共交通機関を充実させてきたオレゴンのポートランドをほめたたえている。

歩ける都市には高学歴の若い人が住みたがるから土地の価値も上がるし、良いビジネスも集まってくる。歩ける町はサステナブルであることと住みたいと思わせる魅力を持つことを兼ね備えている。

歩ける都市では人々が歩くから肥満率も少なく、通勤に時間やお金をかける代わりにほかのレクリエーションに回せるし、いいことずくめ、というのがスペック氏の主張。

都市であれば必ずwalkableであるとは限らず、設計によるのだ、とも言っている。

これはwalkability推進派が共通していうことで、WALKSCOREも「歩ける町の住民は肥満が少ない」というデータを掲載している。

WALKSCOREのデータは不動産紹介サイトRedfinの物件紹介のページにも掲載されるようになった。

「歩ける町」度が上がると不動産の値段も比例して上がるというデータも、実際に確認されているそうだ。

徒歩と公共交通機関を使って安全にすべての用事をすませられる町というのがどれほど恵まれた環境なのかなんて、日本にいたときには考えてもみなかったけど、アメリカでは残念ながらいまのところ、それはごく一部の都市にしかない贅沢なのだ。

 

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