Dispensaries 大麻販売所

2014-1123-1

シアトルの街なかのいたるところで見かける、緑の看板といえば?

答えは、スターバックス、ではなくて、「ディスペンサリー」の緑十字の看板です。

「dispensary」を『リーダーズ英和辞典』で引くと、

n. <病院などの>薬局、調剤室、<学校 工場などの>医務室、保健室、施薬所、施療院、<南部>酒類販売店

となってますが、シアトルの場合は「医療用マリファナ販売所」のこと。

シアトルのディスペンサリーには「ハーブハウス」とか「グリーン&ヘルス」とか、健康食品の店みたいな植物系の名前がつけられているものが多い。みんな申し合わせたように緑十字を看板にしてます。シアトル市内に少なくとも300軒はあるらしい。

Wikipedia では、
In Arizona, British Columbia, California, Colorado, Maine, Oregon, Michigan, New Jersey, Rhode Island, Ontario, Quebec, and Washington, medical cannabis is sold in specially designated stores called dispensaries or “compassion clubs”.
(アリゾナ、ブリティッシュ・コロンビア、カリフォルニア、コロラド、メイン、オレゴン、ミシガン、ニュージャージー、ロードアイランド、オンタリオ、ケベック、ワシントンでは、ディスペンサリーまたは「コンパッション・クラブ」と呼ばれる特定の店で医療用大麻が販売されている)
…と説明されてます。

こないだ別ブログでも「シアトルの大麻園芸」などについて書きましたが、ワシントン州では全米ではじめて2012年にレクリエーション用の大麻使用が合法になって、州のライセンスを受けた大麻小売店が今年(2014年)の7月から営業を開始したばかり。

ライセンスの数は自治体ごとに割り当て数が決まってて、シアトル市内では当初、抽選で21件だけが発行され、そのうち実際に営業を開始しているのは2014年11月現在まだたったの2軒だけ。

大麻小売店は学校や公園や図書館など子どもが出入りする施設の1000フィート(約305メートル)以内に作ってはいけないという規制があるため、大小合わせて公園が400以上もあるシアトルでは、ロケーション選びはかなり厳しい。

シアトルタイムスの記事によると、店舗を仮契約してライセンスの抽選に申し込んだあとで、近くに託児所がオープンしてしまったケースなんかもあるという。

レクリエーション用大麻小売店がまだそれだけで、品数もすごく少ない一方で、医療用大麻の「ディスペンサリー」はカフェの数より多いくらいで、ほとんど何の規制も受けてません。

これはレクリエーション用大麻の使用が合法になるずっと以前から医療用大麻のシステムがあったため。

ワシントン州の法律では、医師が発行する「この患者には医療用大麻が必要です」という証明(通称「グリーンカード」)を持っていれば、大麻草15本まで、または乾燥大麻24オンス(約680グラム)までを所持できることになってます。
(レクリエーション用は乾燥大麻28グラムまで、大麻草は所持不可)。

で、大麻草15本を自宅で栽培するかわりに、まとめて共同栽培してもらってますよという名目で、「ディスペンサリー」、またの名を「collective garden(共同農園)」が次々とオープンしてきたわけです。

私は中に入ったことはないですけど、「グリーンカード」所持者の友人によると、いろんな種類のマリファナ(コーヒーや紅茶などとおなじく、品種によって効き方も味も香りも違う)、マリファナ入り食品、飲料、濃縮オイルなどが売られてるそうです。

会員のための「共同農園」とはいうものの、ワシントン州の医師が発行した「グリーンカード」さえ持っていれば、州内のどこのディスペンサリーにでもひょっこり立ち寄って登録して、目の前に並んでる品物をなんでも買うことができるのが現行のシステム。

この「グリーンカード」だって、それを発行するのを専業としているらしい医師がいるくらいで(検索してみるとすぐに出てくる)、取得が難しいものではないようです。
州が許可している該当する症状や病気は、がん、HIV、てんかん、動脈硬化など重篤な病気のほか、「通常の医薬品や治療法では完治しない、吐き気や食欲不振などの症状を伴う病気」という項目もあって、かなり広く解釈できそうなのが伺える。

ワシントン州では医療用大麻に関する規制がほとんど存在しないので、医療用大麻の使用者がいったいどのくらいいるのか、ディスペンサリーが全部で何軒あるのか、どのくらいの市場規模なのかなどは、だれも把握していない。

実際のところ、医療用のディスペンサリーで売られている大麻製品の多くがレクリエーション用に使われているといってもあながち過言ではないようです。

出店場所も厳しく規制され、税金も徴収されるレクリエーション用小売店とは違い、医療用大麻ディスペンサリーでは特別税も消費税も払わずにすむ。だから、レクリエーション用の店よりずっと安く手に入る。

ワシントン州は「ディスペンサリーは違法」と明言してますし、シアトル市では10月末に、市内のディスペンサリーと栽培・製造業者330軒以上に「あなたたち違法ですよ」と通告し、来年7月までにライセンスを取得するか、事業規模を縮小するか、廃業するように求めたそうです。(KOMOの記事はこちら)

とはいっても、市がディスペンサリーに取得するように求めている医療用大麻小売のライセンスは、現時点ではまだ存在していません。

医療用とレクリエーションの2つのシステムが競合する混乱した市場を統合しようと、州議会にはいろいろな法案が提案されているものの、まだ何も決まらないまま。

来年1月の議会で何か決まるように市から州議会へ圧力がかかっているともいえます。

たしかにシアトル市内のディスペンサリーの増え方は目をみはるものがあって、うちの近所のあたりにもここ3年くらいでかなり目立って増えました。
これだけ「患者」がいるというのはすごい市場だと思うw

レクリエーション用の小売店をオープンするつもりだったのにライセンスの抽選にもれて、やむなくディスペンサリーにしたという店もあるようです。

来年の議会でこれがどのように整理されていくものか、興味しんしんです。
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Parentese ペアレンティーズ

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Seattle Timesで面白い記事を読みました。

『When speaking to infants, aim to quality over quantity (乳児への語りかけは、量より質で)』

Zero to Five: 70 Essential Parenting Tips Based on Science(ゼロ歳から5歳まで:科学にもとづく70の子育てヒント)』という書籍を最近出版したTracy Cutchlowさんのコラムなのだけど、興味深かったのはそこで紹介されていた、赤ちゃんへの語りかけの調査。

42世帯で、1ヶ月に1時間、2年半にわたって赤ちゃんへの語りかけを録音して分析したというこの調査でわかったのは、

● 貧しい家庭の親が1時間に600語しか語りかけていないのに対して、専門職の家庭の親は1時間に2100語も語りかけている。
● 子どもが4歳になるときにはこの差は積もり積もって、4年間で触れたことばの量は4500万語対1300万語になる。だから、4歳児からボキャブラリーを増やそうとプリスクールで急に教育を強化しても効果が上がらないわけだ!

…ということ。で、このコラムの著者、トレーシーさんは、その量だけじゃなくて質も問題なのだという。
ただベラベラ話し続けるのではなく、赤ちゃんにぴったりくっついて、顔を近づけて話すのが重要で、顔を見合わせてコミュニケートすることで、脳の神経が刺激されるから、この時期にこういったスキンシップを持つか持たないかがその後の子どもの言語能力を左右する、のだという。

そうして、「PARENTESE」で話すのも、子どもの発育にとってとっても重要、という。

「parentese(ペアレンティーズ)」という言葉は初めて見た。これは、「Whoose a prettyy baybeee?」のように、歌うように赤ちゃんに話しかける、あの話し方のこと。

「ペアレンティーズ」の抑揚で話しかけられると、それが外国語であっても、赤ちゃんの心拍数が上がり、普通の話し方よりもよく反応するんだそうだ。

「Parentese 」で検索してみたら、PBSのサイトにこんな記事もあった。
Speak Parentese, Not Baby Talk (ベイビー・トークでなくペアレンティーズで話そう)

この記事によると、母音を強調し、ピッチが高く、大げさな顔の表情もオマケにつけて、短くて簡単な言葉をくりかえすペアレンティーズは、赤ちゃんが意識を向けやすく、脳を「マッピング」して言葉を覚えるのにも役立つ、という。

「ベイビー・トーク」は意味のない擬音(「あばばばー」とかですかね)、ペアレンティーズはちゃんとした意味のある短いフレーズなんだと、この記事では述べてます。

母音を強調
歌うように抑揚をつける
ピッチを高く
表情も大げさに
短いことばを繰り返す

がペアレンティーズ、ということのよう。これは万国共通なのかもしれないけれど、日本語よりも英語のほうがずっと抑揚を強調して歌うようにしゃべりやすい。

ていうか。アメリカに来た当初、見ず知らずの(たとえばスーパーマーケットとかで出会った)おばちゃんたちが、まだ小さかったうちの息子に話しかけるときに、急に異常なほどテンションが上がってバカみたいになるのでかなり驚き、また不安になった。
「Heeeeloooo little booooy! Who iz tha good boy? Is that you! Yeees it is! It’s yoooooU!」
みたいな。
これは犬に話しかけるときも同じで、道端で出会った犬に「Oh you are such a sweeet girl!  Areen’t you?」てな感じで、いきなり全開で奇声をあげている人(おもにおばちゃん)をみかける。
いままで人間と話していたときとはがらりと人格が変わってしまったようなそのテンションに、やっぱり怯む。

私が不安になったわけは、アメリカで子どもを育てるなら、こんな話し方ができなければ失格なんだろうか、と、思ってしまったからだった。

このいわゆるペアレンティーズ(当時はそんな単語聞いたこともなかったけど)は相当に難易度が高く思われた。発音とかボキャブラリーとかそういう問題じゃなくて、テンションを急にこんなに上げる技術は、自分には絶対ない、と思った。
しかもうちの元(当時は現役)夫が、男のくせにやたらに流暢にペアレンティーズを操るので、ますます不安がつのった。

YouTubeに「ペアレンティーズの話し方」という動画があった。むちゃくちゃ笑えるので、ぜひご覧いただきたい。https://www.youtube.com/watch?v=ZxmMfLBQOM8

ペアレンティーズを操るには、瞬時に人間としてそれまで培ってきた構えを捨てて、赤ちゃん(や犬)と直にコンタクトできるレベルのプリミティブさになれる技術が必要なのだ。
そしてアメリカ人には、これができる人がとっても多い。
勝手な決めつけだけど、たぶん、イギリス人や日本人には比較的少ないんじゃないかと思う。

そして、たぶん子育てを通過した中年の女性にはペアレンティーズがきわめて上手くなってる人が多い。

私はきわめてテンションの低い親であったとおもうけど、いつのまにか、知り合いのビーグル犬に(それほどテンションは高くないものの)ふつうにペアレンティーズ風に話しかけるようになっている。

やってみると分かるけど、ペアレンティーズは陰鬱な気分では話せない言語なのだ。

脳のスイッチを全部「プラス」に切り替えて、目の前の小さい赤ちゃん(や犬)に、もうとにかく無条件に無償に愛情をじゃんじゃん注ぐ、というのとセットなのであって、話しているうちにたちまち自分のほうもハイになってくる。脳内麻薬が活性化する言語である。

ちなみに、これが通用するのは私の知る限り人間の赤ちゃんと犬だけ。サルはどうだかわからない。

猫に対してペアレンティーズで話しかけようとしても、「お前何やっとん、何のマネやそれ」みたいな、冷たい視線を返されます。

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